歯の神経を抜くと言われたら。神経を取るリスクと「根管治療」の重要性

松山歯科医院の院長、松山昌弘です。
「虫歯が深いので、今回は歯の神経を抜く治療をしましょう」
歯医者でこのように告げられたとき、ショックや大きな不安を覚える方は非常に多くいらっしゃいます。「神経を抜いたら歯はどうなるのだろう?」「強い痛みがあるのだろうか?」と、これからの治療に恐怖を感じてしまうお気持ちは痛いほどよく分かります。
歯科医師としても、患者様の大切な歯の神経は可能な限り残したいと考えています。なぜなら、歯の神経には歯を健康に保つための非常に重要な役割があるからです。しかし、虫歯の進行度合いによっては、将来的に歯そのものを残すために、泣く泣く神経を取る選択をせざるを得ない場合もあります。
この記事では、歯の神経を取ることでお口の中にどのような影響(リスク)が出るのかという正しい知識から、神経を取った後に行う「根管治療(こんかんちりょう)」がいかに重要なものであるかについて、歯科医師の視点で分かりやすく解説します。
治療に対する不安を解消し、ご自身の歯を一本でも多く守るための参考になれば幸いです。
目次
- 1. そもそも歯の「神経」とは?知っておきたい大切な役割
- 2. 歯の神経を抜く(抜髄)ことによる4大リスク
- 3. それでも「神経を抜く治療」が必要となるケース
- 4. 家を建てる時の基礎工事と同じ!「根管治療」の重要性と当院のこだわり
- 5. 一番危険!根管治療を途中で中断してはいけない理由
- 6. まとめ:大切な歯を一本でも多く残し、未来の健康を守るために
1. そもそも歯の「神経」とは?知っておきたい大切な役割
私たちは普段、単に「歯の神経」と呼んでいますが、医学的には「歯髄(しずい)」という組織を指します。この歯髄は、単に痛みを感じるためだけの神経繊維が通っているわけではありません。実は、無数の細い血管が網の目のように張り巡らされている、非常に生命力に溢れた組織なのです。
この血管は、歯の内部に水分や酸素、カルシウムなどの豊富な栄養を運ぶという、極めて重要な役割を果たしています。また、体の中に細菌が侵入しようとしたときに、免疫細胞を送り込んで防御するバリア機能も備わっています。
つまり、歯の神経(歯髄)があるからこそ、歯はみずみずしさと柔軟性を保ち、外部からの刺激や細菌の侵入に耐えることができるのです。
2. 歯の神経を抜く(抜髄)ことによる4大リスク
虫歯が神経まで達してしまい、神経を抜く処置(抜髄:ばつずい)を行うと、お口の中にはどのような変化が起きるのでしょうか。知っておいていただきたい大きなリスクが4つあります。
リスク1:歯がもろくなり、割れやすくなる(破折のリスク)
神経を抜くということは、同時に血管も失ってしまうことを意味します。栄養の供給が途絶えた歯は、まるで「枯れ木」のような状態になってしまいます。
水分を失って乾燥し、弾力性がなくなるため、強い力がかかったときにパキッと折れたり、根元から真っ二つに割れたり(歯根破折)しやすくなります。歯の根元が割れてしまうと、残念ながらほとんどの場合は抜歯せざるを得なくなります。
リスク2:虫歯の再発(二次カリエス)に気づきにくくなる
神経がなくなるため、その歯は痛みを感じなくなります。一見、痛まないのは良いことのように思えるかもしれませんが、これは非常に危険な状態です。
詰め物や被せ物の隙間から再び虫歯が侵入し(二次カリエス)、内部でどんなに大きく広がっても、痛みという「危険信号」が出ないため、ご自身で気づくことができません。気づいた時には手遅れで、歯の根元まで虫歯が進行してしまっているケースが多々あります。
リスク3:歯が徐々に黒ずんで変色してくる
神経がなくなった歯は、代謝が行われなくなるため、時間の経過とともに徐々に黒ずんだり、茶褐色に変色してきたりします(失活歯)。特に前歯など目立つ場所の場合、審美的なお悩みにつながることがあります。
リスク4:歯の寿命が短くなってしまう
上記の「もろくなる」「再発に気づきにくい」という要素が重なるため、神経を失った歯は、神経が残っている健康な歯に比べて、どうしても寿命が短くなる傾向にあります。統計的にも、神経を抜いた歯は将来的に抜歯になる確率が格段に高まることが分かっています。
3. それでも「神経を抜く治療」が必要となるケース
これほど多くのリスクがあるにもかかわらず、なぜ私たちは神経を抜く治療を提案するのでしょうか。それは、「神経を抜かなければ、その歯だけでなく、周囲の骨や体全体に重篤な被害が及ぶから」です。
虫歯菌が神経の深くまで侵入し、激しい痛み(歯髄炎)を起こしている場合、すでに神経は死にしかけており、元に戻ることはありません。これを放置すると、細菌は神経を完全に壊死させ、さらに歯の根の先から顎の骨の中へと侵入していきます。
骨の中で細菌が増殖すると、膿の袋(根尖病巣:こんせんびょうそう)が作られ、激しい痛みや顔の腫れを引き起こします。最悪の場合、骨の重い感染症(骨髄炎)になったり、細菌が血流に乗って全身に回るリスクが生じたりします。
周囲の組織や全身の健康を守るために、汚染されてしまった神経をきれいに除去し、内部を消毒する処置が必要不可欠となるのです。
4. 家を建てる時の基礎工事と同じ!「根管治療」の重要性と当院のこだわり
神経を取った後、その空っぽになった根っこの管(根管)をきれいにお掃除して消毒し、薬を詰めて密閉する治療を「根管治療」と呼びます。
この根管治療は、建築で例えるなら「建物を建てるための基礎工事(地盤改良)」です。
どんなに表面に高価で美しいセラミックの被せ物を入れたとしても、その土台となる根っこの中に細菌が残っていれば、後から内部で膿が溜まって再治療になり、せっかくの被せ物を壊して外さなければならなくなります。歯を長持ちさせられるかどうかは、この根管治療の成否にかかっていると言っても過言ではありません。
しかし、歯の根の中は髪の毛ほどに細く、複雑に湾曲しており、歯科医師の肉眼では見えない非常に暗く狭い世界です。そのため、極めて精密な技術が求められます。当院では、この大切な根管治療において、以下のようなこだわりを持って取り組んでいます。
- 高倍率の拡大鏡の使用: 肉眼では見えない微細な根管の入り口や、隠れた枝分かれを見逃さないよう、視野を何倍にも拡大して正確なアプローチを行います。
- 徹底した防湿と器具の滅菌: 根の治療中に最も避けなければならないのは「唾液の中にいる新たな細菌が根の中に入り込むこと」です。そのため、徹底した防湿を行い、使用する器具は高水準の滅菌器で無菌状態にしたもののみを使用します。
- 丁寧な洗浄と最新の専用器具: 根の壁面にこびりついた細菌を効率よく除去するため、柔軟性の高いニッケルチタンファイルという最新の器具や、効果的な洗浄液を組み合わせて、時間をかけて隅々まで無菌化を目指します。
5. 一番危険!根管治療を途中で中断してはいけない理由
根管治療は、内部の細菌が完全にいなくなるまで何度も消毒を繰り返すため、どうしても数回の通院期間が必要になります。
治療の途中で「痛みが消えたから」「忙しくて時間が取れないから」と、通院をやめて放置してしまう方が稀にいらっしゃいますが、これは最も避けていただきたい大変危険な行為です。
治療途中の歯は、仮の軽い蓋がしてあるだけ、あるいは根管がむき出しに近い状態です。放置すると、お口の中の細菌や食べカスが容赦なく根の中に侵入し、またたく間に大繁殖します。
再開した時には、前回よりもさらに深いところまで細菌に汚染されており、最悪の場合は根っこがボロボロに溶けてしまい、「もう抜くしかありません」という結末を迎えることになります。始まった根管治療は、必ず最後まで受けていただくよう強くお願いいたします。
6. まとめ:大切な歯を一本でも多く残し、未来の健康を守るために
「歯の神経を抜く」という選択は、患者様にとっても歯科医師にとっても苦渋の決断です。しかし、そこからいかに丁寧で確実な「根管治療」を行うかによって、その歯がこの先10年、20年と残せるかどうかの運命が分かれます。
神経を失った歯であっても、精密な根管治療を行い、しっかりとした土台と被せ物で補強し、その後の定期的なメンテナンスを続けていけば、十分に長く機能させることが可能です。
不安なことや分からないことがあれば、どうか一人で悩まずに何でも私にご相談ください。私たちは、あなたの大切な歯を一本でも多く残すために、持てる技術と心を尽くして治療に臨みます。
光が丘で歯の痛みや精密な根管治療についてのご相談なら、松山歯科医院へお任せください。
マイクロスコープや高度な滅菌設備を駆使し、将来にわたって再発させない確実な根管治療を提供させていただきます。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者情報
【略歴】
【所属学会・資格】
- ・日本口腔インプラント学会 所属
- ・日本臨床歯周病学会 所属
- ・日本歯周病学会 所属
- ・厚生労働省認定 歯科医師臨床研修指導医
- ・インディアナ大学歯学部 歯周学インプラント科 JIP-IU研究員
- ・日本顎咬合学会 所属
- ・日本歯科大学・セントラルクリニック歯髄細胞バンク 認定医

