「親知らず」は抜くべきか?残せるのか?歯科医が本音で教える判断基準とタイミング

松山歯科医院のブログをご覧いただき、ありがとうございます。院長の松山です。
「親知らずが生えてきたけれど、抜いたほうがいいですか?」 「今は痛くないけれど、将来悪さをしないか心配です」
日々の診療の中で、このようなご相談をいただくことは非常に多いです。 親知らずの抜歯というと、「顔が腫れる」「すごく痛い」といった怖いイメージが先行してしまい、受診をためらってしまうお気持ち、とてもよく分かります。
結論から申し上げますと、「親知らずは、必ずしも機械的にすべて抜く必要はありません」。 しかし、残しておくことで手前の健康な歯を巻き込んでダメにしてしまうケースや、全身の健康に悪影響を及ぼすケースがあることも事実です。
この記事では、歯科医師の視点から「抜くべき親知らず」と「残してもよい親知らず」の境界線、そして安全に治療を行うための判断プロセスについて、包み隠さずお話しします。 漠然とした不安を解消し、ご自身にとって最善の選択をするための参考にしていただければ幸いです。
目次
- その親知らず、「トラブルメーカー」になっていませんか?
- 明確に「抜歯」をおすすめする4つのケース
- 無理に抜かなくていい。「経過観察」でよいケースとは
- 「今は痛くない」が一番怖い?放置するリスク
- 安全な抜歯のために。CT診断と当日の流れ
- 術後の腫れや痛みは?知っておいてほしいリスクとケア
- 抜くか迷っている方は、一度検査にお越しください
その親知らず、「トラブルメーカー」になっていませんか?
親知らずを「抜くか、抜かないか」。 その判断の最大の基準は、「その歯が現在、あるいは将来において、お口の中のトラブルメーカーになるかどうか」です。
親知らずは、前から数えて8番目の歯です。大昔の人類にとっては、硬いものを噛み砕くために必要な歯でしたが、食生活の変化で顎(あご)が小さくなった現代人にとっては、綺麗に生えるスペースが足りず、様々な問題を引き起こす原因となりがちです。
私が診断をする際は、単に「親知らずがあるから抜きましょう」とは言いません。
- 生えている向き(真っ直ぐか、横向きか)
- 歯磨きができる環境にあるか(清掃性)
- 手前の歯(第二大臼歯)に悪影響を与えていないか
- 神経や血管、上顎洞との位置関係
これらを総合的に評価し、「抜くことのメリット」が「抜くことのリスク」を上回った場合にのみ、抜歯をご提案しています。
明確に「抜歯」をおすすめする4つのケース
具体的に、歯科医師として「これは早めに抜いたほうが良い」と判断する主なケースをご紹介します。
- 1. 痛みや腫れを繰り返している(智歯周囲炎) 親知らずが中途半端に顔を出していると、歯ぐきが被さって「袋(フード)」のような状態になります。この隙間は歯ブラシが届きにくく、細菌の温床になりがちです。疲れた時や体調が悪い時に腫れや痛みを繰り返す場合は、抜歯が根本的な解決策となります。
- 2. 手前の歯を虫歯や歯周病にするリスクがある これが最も怖いケースです。親知らずが斜めや横向きに生えて手前の歯にぶつかっていると、その隙間に汚れが溜まり続けます。結果、親知らずだけでなく、一生使わなければならない手前の大切な奥歯(第二大臼歯)まで深い虫歯にしてしまうことがあります。手前の歯を守るために、親知らずを犠牲にする(抜く)という判断が必要です。
- 3. 歯並びや噛み合わせを乱している 親知らずが手前の歯をグイグイと押す力が強い場合、全体の歯並びが悪くなる原因になることがあります。矯正治療を行う際などは、後戻りを防ぐために抜歯が必要になることが多いです。
- 4. 妊娠・出産や長期留学を控えている 女性の場合、妊娠中のホルモンバランスの変化で親知らずが急に腫れることがあります。妊娠中は薬の服用やレントゲン撮影に制限が出るため、トラブルが起きる前に「予防的に」抜いておくことを強くおすすめしています。同様に、医療機関にかかりにくい海外への長期滞在予定がある方も注意が必要です。
無理に抜かなくていい。「経過観察」でよいケースとは
一方で、以下のような条件が揃っていれば、無理に抜く必要はありません。
- 上下とも真っ直ぐに生えていて、しっかり噛み合っている
- 歯ブラシやフロスが奥まで届き、清潔に保てている
- 骨の中に完全に埋まっていて、手前の歯や神経に影響がない
また、親知らずを手前の歯が失われた時の「移植用(歯の移植)」として温存できる可能性もあります。 ただし、残すと決めた場合でも、「今は大丈夫」なだけであって、将来的に状況が変わることもあります。定期検診でのチェックは必須です。
「今は痛くない」が一番怖い?放置するリスク
「痛くないから、まだ行かなくていいや」 そう思っている方こそ、注意が必要です。
慢性的な炎症は、痛みなどの自覚症状がないまま静かに進行します。 「なんとなく奥歯が変な感じがする」と思って来院された時には、手前の歯の根元が大きく溶かされていたり、顎の骨の中に「嚢胞(のうほう)」という膿の袋ができていたりすることも珍しくありません。 痛みが出てからでは、麻酔が効きにくかったり、炎症を抑えるために治療期間が長引いたりと、患者さまの負担が大きくなってしまいます。
「痛くないとき」こそが、冷静に検査を行い、計画的に治療できるベストなタイミングなのです。
安全な抜歯のために。CT診断と当日の流れ
当院では、安全性を最優先に考え、抜歯前の診査・診断に力を入れています。
【精密な画像診断】 従来のレントゲンだけでなく、必要に応じて「歯科用CT」による撮影を行います。 親知らずの根っこは複雑な形をしていることが多く、下顎であれば「下歯槽神経(唇の感覚を司る神経)」との距離、上顎であれば「上顎洞(鼻の空洞)」との距離を三次元的に正確に把握することで、抜歯に伴うリスクを最小限に抑えます。
【抜歯当日の流れ】
- 体調確認: 当日の体調や、お薬の服用状況を確認します。
- 麻酔: 表面麻酔と局所麻酔を使い、しっかりと痛みをコントロールします。
- 抜歯処置: 歯の状態に合わせて、最小限の骨の切削や、歯を分割して取り出す処置を行います。
- 縫合・止血: 傷口を縫い合わせ、血が止まっていることを確認します。
恐怖心が強い方には、これから何をするのかを丁寧にご説明し、リラックスしていただけるよう配慮しながら進めていきます。
術後の腫れや痛みは?知っておいてほしいリスクとケア
「抜いた後はどれくらい腫れますか?」というのも、よくあるご質問です。
一般的に、骨を削ったり歯茎を切開したりした場合は、術後2〜3日目をピークに腫れが出ることがあります。これは体が治そうとする正常な反応ですので、過度に心配する必要はありません。多くの場合、1週間程度で落ち着きます。 痛みについては、処方する鎮痛剤でコントロールできる範囲であることがほとんどです。
【術後の注意点】
- 当日は、激しいうがいを避けてください(血餅という「かさぶた」が取れてしまい、治りが遅くなる「ドライソケット」の原因になります)。
- 飲酒、激しい運動、長時間の入浴は控えて、安静にしてください。
- 処方されたお薬は、指示通りに服用してください。
もし、抜歯後にしびれが残る、出血が止まらないなどの異常があれば、すぐにご連絡いただける体制を整えています。
抜くか迷っている方は、一度検査にお越しください
親知らずの抜歯は、誰にとっても勇気がいることです。 だからこそ、自己判断で悩むのではなく、まずは専門家の目による「現状の把握」をおすすめします。
検査をした結果、「今は抜かなくていいですね」となることも多々ありますし、もし抜くことになったとしても、リスクや手順をしっかり理解した上で臨む治療は、不安の大きさが全く違うはずです。
光が丘で親知らずの抜歯や治療についてのご相談なら、松山歯科医院へお任せください。 患者さま一人ひとりの生活背景やご希望に寄り添い、「あなたにとって一番良い方法」を一緒に考えていきましょう。

