「冷たいものがしみる」のはなぜ?知覚過敏の原因と院長がおすすめする対策

松山歯科医院の院長、松山昌弘です。
氷を入れた冷たい飲み物を飲んだ時や、冬場の冷たい風を口に吸い込んだ時、あるいはアイスクリームを食べた時に、「キーン!」と歯に鋭い痛みが走った経験はありませんか?
「もしかして、虫歯ができたのかな?」と不安になって来院される患者様は非常に多くいらっしゃいます。しかし、実際に診察してみると、虫歯ではなく「知覚過敏(ちかくかびん)」であることが少なくありません。
知覚過敏による痛みは、数秒から数十秒でスッと消えてしまうのが特徴です。そのため、「痛みが引いたから大丈夫だろう」とそのまま放置してしまう方も多いのですが、実はその裏には、歯や歯ぐきのSOSサインが隠れていることがあります。
この記事では、なぜ虫歯ではないのに歯がしみるのかという根本的なメカニズムから、日々の生活に潜む知覚過敏の意外な原因、そして今日からできる対策について、歯科医師の視点で分かりやすくお話しします。
原因を正しく知り、適切なケアを行うことで、冷たいものを我慢しない快適な生活を取り戻しましょう。
目次
- 1. 虫歯じゃないのに「キーン」と痛む!知覚過敏のメカニズム
- 2. なぜ歯がしみるの?知覚過敏を引き起こす4つの主な原因
- 3. 今日からできる!ご自宅での知覚過敏セルフケア対策
- 4. 痛みが続くなら早めに受診を。歯科医院で行う知覚過敏治療
- 5. まとめ:しみる痛みは我慢せず、正しいケアとプロの治療で解決を
1. 虫歯じゃないのに「キーン」と痛む!知覚過敏のメカニズム
歯の構造は、大きく分けて3つの層から成り立っています。一番外側にあるのが、人体で最も硬いと言われる「エナメル質」。その内側にあるのが、少し柔らかい「象牙質(ぞうげしつ)」。そして中心には神経や血管が通っている「歯髄(しずい)」があります。
健康な状態の歯は、エナメル質や歯ぐきにしっかりと覆われているため、冷たいものなどの刺激が直接神経に届くことはありません。
しかし、何らかの理由で一番外側のエナメル質が削れてしまったり、歯ぐきが下がって歯の根元が露出したりすると、その下にある「象牙質」がむき出しになってしまいます。
象牙質には、神経へとつながる細い管(象牙細管:ぞうげさいかん)が無数に走っています。そのため、むき出しになった象牙質に冷たいもの、熱いもの、甘いもの、あるいは歯ブラシの毛先などの刺激が触れると、その刺激が管を通って直接神経に伝わり、「キーン!」という鋭い痛みを感じてしまうのです。これが知覚過敏(象牙質知覚過敏症)のメカニズムです。
2. なぜ歯がしみるの?知覚過敏を引き起こす4つの主な原因
象牙質がむき出しになってしまうのには、日々の何気ない習慣や、お口の中の変化が大きく関係しています。主な原因を4つご紹介します。
・原因1:強すぎる歯磨き(ブラッシング圧)による摩耗
「汚れをしっかり落としたい」「歯を白くしたい」という思いから、硬めの歯ブラシを使い、ゴシゴシと力を入れて力任せに磨いていませんか?
実は、毎日の強すぎるブラッシング(オーバーブラッシング)は、エナメル質を徐々に削り落としてしまう大きな原因です。特に、歯と歯ぐきの境目付近はエナメル質が薄いため、力強く磨き続けると容易に削れて象牙質が露出し、知覚過敏を引き起こします。
・原因2:歯周病や加齢による「歯ぐき下がり」
本来、歯の根元の部分はエナメル質ではなく、セメント質という非常に薄い組織で覆われており、さらにその上を歯ぐきが守っています。
しかし、歯周病が進行して歯を支える骨が溶けたり、加齢によって歯ぐきの組織が痩せたりすると、歯ぐきが下がって歯の根元が露出してしまいます。歯の根元はバリアが弱いため、すぐに象牙質がむき出しになり、刺激に非常に敏感になってしまうのです。
・原因3:無意識の「歯ぎしり・食いしばり」による負担
睡眠中の歯ぎしりや、日中ストレスを感じた時の無意識の食いしばりは、想像以上に強大な力が歯にかかります。
この過剰な力が長期間かかり続けると、歯の根元部分に応力が集中し、エナメル質がマイクロクラック(微細なひび割れ)を起こして剥がれ落ちてしまうことがあります(くさび状欠損)。このようにして象牙質が露出することも、知覚過敏の代表的な原因です。
・原因4:酸性の強い飲食物による「酸蝕歯(さんしょくし)」
炭酸飲料、スポーツドリンク、柑橘類、お酢など、酸性の強い飲食物を頻繁に摂取する習慣があると、歯の表面のエナメル質が化学的に溶かされてしまいます。これを「酸蝕歯」と呼びます。
エナメル質が薄くなったり溶けてなくなったりすれば、当然、内部の象牙質が露出し、しみるようになります。健康のために飲んでいる黒酢やレモン水が、実は歯を溶かしているケースも少なくありません。
3. 今日からできる!ご自宅での知覚過敏セルフケア対策
「最近少ししみる気がする」という初期の知覚過敏であれば、ご自宅でのケア習慣を見直すことで症状を和らげることが可能です。
・対策1:歯磨きの「力加減」と「歯ブラシ」を見直す
まずは、ゴシゴシ磨きをやめましょう。歯ブラシの持ち方は、力を抜きやすい「鉛筆持ち(ペングリップ)」が基本です。ブラシの毛先が広がらない程度の優しい力(約150〜200グラムの力)で、小刻みに動かすようにしてください。
また、歯ブラシは「やわらかめ」か「ふつう」の硬さを選び、エナメル質をこれ以上傷つけないように心がけましょう。
・対策2:知覚過敏用の歯磨き粉を使用する
市販されている知覚過敏ケア用の歯磨き粉には、硝酸カリウムなどの薬効成分が含まれています。この成分が、象牙質にある神経へとつながる管(象牙細管)を封鎖し、刺激の伝達を防いでくれます。
即効性があるわけではありませんが、毎日使い続けることで徐々にしみる症状が軽減されることが多いです。
・対策3:酸性の飲食物の摂り方を工夫する
酸性の強いものを頻繁に摂る習慣がある場合は、摂取回数を減らす、ダラダラ飲みを避けるといった工夫が必要です。また、酸性のものを飲食した後は、お水でお口をゆすぐか、少し時間をおいて唾液が酸を中和してから歯磨きをするようにしてください。
4. 痛みが続くなら早めに受診を。歯科医院で行う知覚過敏治療
セルフケアを続けても痛みが引かない場合や、痛みが激しくて食事が楽しめない場合は、早めに歯科医院を受診してください。「ただの知覚過敏だと思っていたら、実は深い虫歯だった」ということも少なくありません。
歯科医院で知覚過敏と診断された場合、以下のようなアプローチで症状の改善を図ります。
コーティング剤(知覚過敏抑制剤)の塗布
露出してしまった象牙質の表面に、専用のコーティング剤やフッ素を塗布し、刺激が神経に伝わる管を物理的に塞ぎます。軽度の知覚過敏であれば、数回の塗布で痛みが治まることが多いです。
レジン(プラスチック)による充填
歯の根元が大きくえぐれてしまっている場合(くさび状欠損など)は、削れてしまった部分に白いプラスチックの素材(コンポジットレジン)を詰めて、露出した象牙質を物理的にカバーします。
ナイトガード(マウスピース)の作製
歯ぎしりや食いしばりが原因で歯に過度な負担がかかっている場合は、就寝時に装着する専用のナイトガードを作製します。これにより、歯への直接的なダメージを防ぎ、これ以上のエナメル質の破壊を食い止めます。
神経を保護する処置(重症の場合)
上記の方法でも痛みが全く引かず、日常生活に重大な支障をきたすほど痛みが激しい重症例に限り、最終手段として歯の神経を取る処置を行うこともあります。しかし、神経を取ると歯の寿命が短くなるため、可能な限り神経を温存する治療を優先します。
5. まとめ:しみる痛みは我慢せず、正しいケアとプロの治療で解決を
「冷たいものがしみる」という症状は、お口が発している SOS のサインです。
少ししみる程度だからと我慢したり、放置したりしていると、知らず知らずのうちにエナメル質の破壊や歯ぐき下がりが進行してしまう恐れがあります。
まずはご自身のブラッシングの力加減を見直し、知覚過敏用の歯磨き粉などを試してみてください。それでも症状が改善しない場合は、決して自己判断せず、専門家である歯科医師の診察を受けることが大切です。
虫歯なのか、知覚過敏なのか、あるいは別の原因なのか。正しく原因を見極めた上で、適切な処置を行うことが、あなたの大切な歯を長く守り、快適な生活を取り戻すための最短ルートです。
光が丘で「冷たいものがしみる」「歯の痛みがある」といったご相談なら、松山歯科医院へお任せください。
患者様一人ひとりのお口の状態を丁寧に確認し、痛みに寄り添った最適な治療法をご提案させていただきます。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者情報
【略歴】
【所属学会・資格】
- ・日本口腔インプラント学会 所属
- ・日本臨床歯周病学会 所属
- ・日本歯周病学会 所属
- ・厚生労働省認定 歯科医師臨床研修指導医
- ・インディアナ大学歯学部 歯周学インプラント科 JIP-IU研究員
- ・日本顎咬合学会 所属
- ・日本歯科大学・セントラルクリニック歯髄細胞バンク 認定医

