歯ぎしり・食いしばりがもたらす悪影響とは?ナイトガードを用いた予防と対策

松山歯科医院の院長、松山昌弘です。
「朝起きたとき、なんとなく顎がだるい、疲れている」
「歯医者さんで『歯がすり減っていますね』と指摘された」
「虫歯ではないのに、冷たいものがキーンとしみる」
診療室で患者様のお口を拝見していると、このような症状にお悩みの方が近年非常に増えていると感じます。これらの不調の裏には、多くの場合「歯ぎしり」や「食いしばり」という無意識の習慣が隠れています。
「寝ている時のことだから仕方ない」「音が鳴っていないから大丈夫」と放置してしまうお気持ちもわかりますが、歯ぎしりや食いしばりによって歯や顎にかかる力は、食事の時の何倍にもなり、ご自身の体重を超えるほどの大きな負担となることもあります。そのままにしておくと、大切な歯を失う原因にもなりかねません。
この記事では、なぜ歯ぎしりや食いしばりが起きてしまうのか、お口や体全体にどのような悪影響をもたらすのか、そして、歯を守るための効果的な対策である「ナイトガード(マウスピース)」について、歯科医師の視点で分かりやすくお話しします。
ご自身の歯を長く健康に保つためのヒントにしていただければ幸いです。
目次
- 1. そもそもなぜ?歯ぎしり・食いしばりが起こる原因
- 2. 放置は危険!歯ぎしり・食いしばりがもたらす4つの悪影響
- 3. 大切な歯を守る盾「ナイトガード(マウスピース)」の役割と効果
- 4. ご自身の歯にぴったりフィット!当院のナイトガード作製の流れ
- 5. 日常生活で気をつけるべきセルフケアと「TCH(上下の歯の接触癖)」
- 6. まとめ:無意識の負担から、あなたの大切な歯を守り抜くために
1. そもそもなぜ?歯ぎしり・食いしばりが起こる原因
私たちはなぜ、無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりをしてしまうのでしょうか。原因は一つではなく、複数の要素が絡み合っていることがほとんどです。
最も大きな原因とされているのが「ストレス」です。日々の仕事や家事、人間関係などの精神的なストレスを無意識のうちに解消し、発散しようとする体の防御反応として、睡眠中に歯ぎしりが起こると考えられています。
また、「噛み合わせのバランスの乱れ」も原因の一つです。治療途中の歯があったり、歯が抜けたままになっていたりして噛み合わせが不安定だと、顎が安定する位置を探そうとして無意識に歯をこすり合わせてしまうことがあります。
さらに、飲酒や喫煙、カフェインの過剰摂取などの生活習慣が、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを引き起こす要因になることも分かっています。
2. 放置は危険!歯ぎしり・食いしばりがもたらす4つの悪影響
「ギリギリ」という音が鳴る歯ぎしりだけでなく、音の出ない「食いしばり(クレンチング)」も非常に厄介です。これらが毎日のように続くと、お口や体に次のような深刻なダメージを与えてしまいます。
悪影響1:歯のすり減り・欠け・ひび割れ
寝ている間の食いしばりは、自分の体重以上の力が歯にかかると言われています。この強大な力が毎晩繰り返されると、エナメル質が削れて平らになったり(咬耗:こうもう)、歯の根元がえぐれたり(くさび状欠損)、最悪の場合は歯の根っこから真っ二つに割れてしまう(歯根破折)こともあります。根が割れてしまうと、残念ながら抜歯せざるを得ないことが多くなります。
悪影響2:知覚過敏や虫歯リスクの増加
歯の表面のエナメル質が削れたり、歯に細かなひび(マイクロクラック)が入ったりすると、その奥にある象牙質という敏感な層に刺激が伝わりやすくなります。これが「冷たいものがしみる」知覚過敏の原因です。また、ひび割れた部分から細菌が侵入しやすくなり、見えないところで虫歯が進行してしまうリスクも跳ね上がります。
悪影響3:歯周病の急激な悪化
歯周病菌によって歯を支える骨が弱っている状態で、さらに上から強い力で揺さぶられ続けるとどうなるでしょうか。歯を支えている組織の破壊が一気に加速し、歯周病が急激に進行してしまいます。歯周病治療を行ってもなかなか歯の揺れが収まらない場合、食いしばりが原因であるケースが非常に多いのです。
悪影響4:顎関節症や肩こり・頭痛など全身の不調
強い力で噛みしめるため、お口を開け閉めする顎の関節や、その周囲の筋肉に過度な疲労が蓄積します。これが「口が開けにくい」「顎がカクカク鳴る・痛い」といった顎関節症を引き起こします。さらに、顎の筋肉は首や肩、頭の筋肉ともつながっているため、慢性的な肩こりや偏頭痛といった全身の不調(不定愁訴)を招く原因にもなります。
3. 大切な歯を守る盾「ナイトガード(マウスピース)」の役割と効果
このような恐ろしい悪影響から大切な歯や顎を守るために、最も効果的で広く行われている対策が「ナイトガード(夜間用マウスピース)」の装着です。
ナイトガードは、主に就寝時に上あごの歯に装着する透明なプラスチック製のカバーです。これを装着することで、次のような効果が期待できます。
まず、歯と歯が直接こすれ合うのを防ぐ「クッション」の役割を果たし、歯のすり減りや欠けを物理的に防ぎます。
さらに、噛みしめたときの強大な力をナイトガード全体に分散させることで、特定の歯や顎の関節、周囲の筋肉への負担を大幅に軽減します。朝起きた時の顎のだるさや、肩こりなどの症状が和らぐ患者様もたくさんいらっしゃいます。
症状の改善を目的としたナイトガードの作製は、健康保険が適用されますので、費用面でも安心して始めていただける治療法です。
4. ご自身の歯にぴったりフィット!当院のナイトガード作製の流れ
インターネットなどで市販のお湯で温めて型を取るマウスピースも販売されていますが、お口に合わないものを使い続けると、かえって噛み合わせを悪くしたり、顎の痛みを引き起こしたりする危険性があります。歯科医院でご自身のお口の型を精密に採って作る「オーダーメイドのナイトガード」をご使用いただくことを強くおすすめします。
当院での作製ステップは非常にシンプルです。
- 診察と型取り: まずはお口の状態や噛み合わせ、顎の関節を丁寧に診察します。虫歯や歯周病の治療が必要な場合は先に行うこともあります。その後、専用の材料で精密な歯型を採ります。
- 作製: 歯型をもとに、歯科技工士が一人ひとりのお口にぴったりと合うナイトガードを作製します。
- 調整とお渡し: 出来上がったナイトガードをお口に合わせて装着していただき、噛み合わせのバランスや、きつすぎるところがないかなどをミクロン単位で微調整してお渡しします。
お渡しした後も、使っていくうちにナイトガード自体が削れてきたり、お口の状態が変わったりすることがありますので、定期的なメンテナンスの際に必ずお持ちいただき、チェックと調整を行っています。
5. 日常生活で気をつけるべきセルフケアと「TCH(上下の歯の接触癖)」
ナイトガードは夜間の無意識な力から歯を守る優れた道具ですが、日中の「意識できる時間帯」の過ごし方を見直すことも非常に重要です。
パソコン作業に集中している時や、テレビを見ている時、ご自身の上下の歯はくっついていませんか?本来、リラックスしている状態では、上下の歯は数ミリ離れているのが正常です。上下の歯が触れ合い続けている癖を「TCH(Tooth Contacting Habit:上下歯列接触癖)」と呼びます。弱い力であっても、長時間歯が触れ合い続けることで筋肉が疲労し、知覚過敏や顎の痛みの原因となります。
日中、「歯がくっついている」と気づいたら、意識的に肩の力を抜き、深呼吸をして歯を離すように心がけてください。パソコンのモニターや冷蔵庫など、目につくところに「歯を離す!」と書いた付箋を貼っておくのも効果的なセルフケアです。
6. まとめ:無意識の負担から、あなたの大切な歯を守り抜くために
歯ぎしりや食いしばりは、ほとんどが無意識下で行われているため、ご自身ではなかなか気づくことができません。「自分はやっていない」と思っていても、お口の中にはっきりと痕跡が残っているケースは数多くあります。
「朝起きると顎が疲れている」「歯が少し短くなってきた気がする」「原因不明の歯の痛みや肩こりがある」といったサインがあれば、それはお口が発している SOSかもしれません。放置して取り返しのつかないダメージを受ける前に、まずは歯科医院でしっかりとしたチェックを受けることが大切です。
ナイトガードを活用し、日々のちょっとした癖を見直すだけで、お口のトラブルは未然に防ぐことができます。
光が丘で歯ぎしり・食いしばりやナイトガードについてのご相談なら、松山歯科医院へお任せください。
患者様の大切な歯を過度な負担から守り、一生涯ご自身の歯で快適に過ごせるよう、全力でサポートさせていただきます。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者情報
【略歴】
【所属学会・資格】
- ・日本口腔インプラント学会 所属
- ・日本臨床歯周病学会 所属
- ・日本歯周病学会 所属
- ・厚生労働省認定 歯科医師臨床研修指導医
- ・インディアナ大学歯学部 歯周学インプラント科 JIP-IU研究員
- ・日本顎咬合学会 所属
- ・日本歯科大学・セントラルクリニック歯髄細胞バンク 認定医

